皮膚血管肉腫は、血管内側の細胞(血管内皮細胞)が、がん化したものです。血管肉腫は、極めてまれな腫瘍で、その治療法には免疫療法、外科療法、放射線療法、化学療法の4大療法が用いられます。悪化する可能性が高いため、すぐに複数の治療を組み合わせて実施すべきと考えられており、各施設で可能な治療が病期を問わず実施されています。
血管肉腫の初期治療における化学療法は、抗がん剤のパクリタキセルが1次治療薬となっています。しかし、パクリタキセルによる化学療法と放射線療法の併用においても、大半の症例において長期的ながんの縮小あるいは消失を得ることは困難な状況です。したがって、2次治療における有効性・安全性の高い治療法や治療薬の開発が望まれています。
PAI-1は血管内皮細胞に発現しており、その腫瘍である血管肉腫もPAI-1を高発現しています。また、その発現頻度が高い患者では1次治療で用いられるパクリタキセルの効果が得られにくいことが報告されています。パクリタキセルは血管肉腫にアポトーシスと呼ばれる細胞死を誘導しますが、PAI-1を高発現しているがん細胞はアポトーシスを起こしにくいことが分かっています。そこで、パクリタキセルとPAI-1阻害薬RS5614を併用することにより、パクリタキセルの血管肉腫に対する治療効果を増強できる可能性が強く示唆されます。
東北大学などと共同で、パクリタキセルが無効となった皮膚血管肉腫患者を対象に、パクリタキセルとRS5614の併用による有効性及び安全性を評価する第Ⅱ相医師主導治験を開始しました。
2023年4月に広島大学と包括的研究協力に関する協定書を締結しました。本治験は広島大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(HiREx)及び広島臨床研究開発支援センターのサポートを得て本治験を実施しています。本研究で有効性を検証できれば、有効な治療薬の無い皮膚血管肉腫の2次治療に対して新たな治療法が提案できます。