開発状況

固形がん:皮膚血管肉腫治療薬


皮膚血管肉腫は、血管内側の細胞(血管内皮細胞)が、がん化したもので、5年生存率が10%以下という極めて予後不良な希少がんです。日本の患者数は欧米の発症頻度と比べ高く(100万人あたり 2.5人)、近年発症頻度は増加しています。皮膚血管肉腫の治療は、第1選択薬での全生存率は649日と短く、一次治療薬剤のみで長期寛解を得ることは困難です。また、二次治療薬でも過半数の患者で重篤な有害事象を有することから、新たな治療薬の開発が急務となっています。

現在の治療と課題

血管肉腫は5年生存率が10%以下という極めて予後不良な希少がんで、肉腫の約 2~3%程度の発症率と報告され、近年増加しています。部位別発症頻度では、皮膚が約 49.6%と最も多く、次いで乳房実質 14.4%、軟部組織 11.2%、心臓 6.7%、骨 4.1%、それ以外が 14.0%と報告されています。以前は皮膚が 1/3程度でしたが近年では約 1/2に増加しており、放射線治療後に生じる皮膚血管肉腫の増加がその要因として考えられています。

現在の血管肉腫の治療法は免疫療法、外科療法、放射線療法、化学療法の組み合わせですが、予後は極めて悪いです。血管肉腫の第1選択薬は、アポトーシス誘導剤のタキサン系抗がん剤(パクリタキセル)ですが、パクリタキセルを使用した全生存率は649日と短く、長期寛解を得ることは困難です。また維持療法としてのパクリタキセルの投与期間中央値はわずか274日であり、満足のいくものではありません。そのため、血管肉腫の治療では、二次治療以降の治療が重要となりますが、二次治療薬として使用されているエリブリンやパゾパニブの奏効率は15~20%であり、過半数の患者で重篤な有害事象を有します。

血管肉腫の治療において重要な二次治療に対して有効な治療は無く、有効性が高く安全性の高い新たな治療薬の開発が急務となっています。

当社のソリューションの特徴

PAI-1は血管内皮細胞に発現しており、その腫瘍である血管肉腫もPAI-1を高発現しています。また、その発現頻度が高い患者では一次治療で用いられるパクリタキセルの効果が得られにくいことが報告されています。パクリタキセルは血管肉腫にアポトーシスと呼ばれる細胞死を誘導しますが、PAI-1を高発現しているがん細胞はアポトーシスを起こしにくいことが分かっています。そこで、パクリタキセルとPAI-1阻害薬RS5614を併用することにより、パクリタキセルの血管肉腫に対する治療効果を増強できる可能性が強く示唆されます。

東北大学などと共同で、パクリタキセルが無効となった皮膚血管肉腫患者を対象に、パクリタキセルとRS5614の併用による有効性及び安全性を評価する第Ⅱ相医師主導治験を開始しました。

2023年4月に広島大学と包括的研究協力に関する協定書を締結しました。本治験は広島大学レナサイエンスオープンイノベーションラボ(HiREx)及び広島臨床研究開発支援センターのサポートを得て本治験を実施しています。本研究で有効性を検証できれば、有効な治療薬の無い皮膚血管肉腫の二次治療に対して新たな治療法が提案できます。

現在までの進捗

2023年1月にPMDA相談を終了、治験実施計画書が確定し、同年8月に治験計画届を提出しました。東北大学、自治医科大学、九州大学、名古屋市立大学、国立がん研究センター中央病院、がん研究会有明病院などの大学/医療機関と共同で、タキサン系抗がん剤パクリタキセルが無効となった皮膚血管肉腫患者16例を対象にパクリタキセルとRS5614の併用による有効性及び安全性を評価する第Ⅱ相医師主導治験を2023年10月に開始しました。本研究で有効性を検証できれば、有効な治療薬のない皮膚血管肉腫患者に対して新たな治療法が提案できます。本治験はHiRExを主体に実施しています。