開発状況

呼吸機能検査支援AIプログラム医療機器


世界保健機関(WHO)では、がん・糖尿病・循環器疾患に加えて呼吸器疾患を重要な非感染性疾患(NCDs)として考えています。代表的な呼吸器疾患に、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息などがあります。厚生労働省「健康日本21」の改定でも、COPDは重要な疾患として取り上げられ、「肺の生活習慣病」と言われています。

COPD及びその他の肺の病気の診断には、代表的な呼吸機能検査として、被験者が吐き出す息の量と吐き出す時間を測定する肺機能検査(スパイロメトリー)が行われています。

現在の検査と課題

スパイロメトリーでの診断を行う際には、被験者(患者)の協力(努力呼吸)が必要である点に加えて、正しく検査が行えたかどうかを判定し、かつ出力された結果(フローボリューム曲線)を解釈する必要があります。しかし、非専門医には解釈が難しいため、スパイロメトリーの普及が不充分です。

当社は、呼吸器分野における医療現場の課題を解決するために、人工知能(AI)を用いることで解釈困難な画像から疾患及び測定エラーを検出するプログラム医療機器を開発することとしました。

これまでの成績

初期検証

当社の進めるプログラム医療機器の開発は、医療現場での課題を医療従事者から取得し、活用方法や取得可能なデータから最適なAIプログラムを選択する必要があります。初期検証では呼吸機能検査診断機器から排出されるフローボリューム曲線画像による「画像分析」と、機器の中に保存されている「数値データ」を活用する2つの方法を検討していました。そこで、どちらの手法がより高い分類精度を期待することができるか、少数のデータを活用して分析しました。

分析の結果、呼吸器の専門医であっても「数値データ」では疾患の特徴を適切にラベル付けすることが困難で、期待する分類精度は得られませんでしたが、適切なラベル付けが可能であった画像分析では一定の分類精度を得ることができました。この検証の結果から、当社は画像から疾患やエラーを分類するAIを活用することを決定しました。

開発段階

分類対象は呼吸器専門の医師とライセンシーであるチェスト株主会社(実用化企業)と相談し以下の通りに決定しました。

疾患分類  「健常者/気管支喘息/COPD/間質性肺疾患」  : 測定エラー  「咳/ためらい/閉塞/努力不足」

最適な予測AIアルゴリズム決定のための初期精度検証は、1,900例のスパイロメトリー画像データを用いて行いました。その後、本分析として、正しい例のデータセットを構築後、COPD、気管支喘息、特発性肺線維症(IPF)、健常人、気管支拡張症、気腫合併肺線維症(CPFE)、結核後遺症の7つの疾患データを分析しました。その結果、スパイロメトリー画像データを用いた結果はそれぞれ、86%(健常人)、95%(気管支喘息)、85%(COPD)、93%(IPF)、75%(気管支拡張症)、66%(CPFE)、47%(結核後遺症)と精度の高い結果が得られており、2023年3月には当社における開発を完了して同年6月にチェスト株式会社と事業化段階に移行することを同意しました。今後は、実用化に向けたシステム等の開発をチェスト株式会社が主体となって実施する予定です。