開発状況

糖尿病治療支援AIプログラム医療機器


本邦には糖尿病患者が約1,000万人おり、うち100万人以上がインスリン治療中です。糖尿病には様々な合併症(網膜症・腎症・神経障害・脳卒中・心筋梗塞・下肢閉塞性動脈硬化症など)があり、合併症が発症するとQOLと寿命が著しく低下します。合併症を予防するためには適切な血糖コントロールが不可欠であり、食事運動療法や薬物治療(血糖降下薬やインスリン)などが重要です。適切な血糖コントロールのためには生理的な血中インスリン濃度の模倣が重要であり、その代表的な手段として追加インスリンと基礎インスリンの補充による強化インスリン療法(インスリン頻回注射法)があります。

インスリンの作用イメージ

しかし、インスリンの安全な用量域は狭く、過剰投与で低血糖を生じるために、患者ごとに最適な種類と投与量を選定する必要があります。一方、糖尿病専門医は医師全体の2%もおらず、地理的にも偏在しているため、現状では糖尿病患者の主治医が糖尿病専門医であるとは限らず、むしろ非専門医に受診することが多いです。

当社ソリューションの特徴

当社は、非糖尿病専門医(ユーザー)が入院中の糖尿病患者(対象患者)に適切にインスリン治療を行うための人工知能(AI)に基づくプログラム医療機器であるDM-SAiL(糖尿病Skill Acquisition Learning、SAiL)を、東北大学、日本電気株式会社(NEC)及びNECソリューションイノベータ株式会社(NES)と共同で開発しています。DM-SAiLは、非専門医による強化インスリン治療を補助するものであり、強化インスリン療法を実施する際の超速効型インスリン製剤と持効型インスリン製剤の推奨投与単位を提示します。

これまでの進捗

2022年4月にAMEDの「医工連携イノベーション推進事業(開発・事業化事業)(当社が研究代表機関)」に採択され、東北大学病院に入院する約1,000名(約1,080,000臨床パラメータ)の患者データに基づく分析作業が終了し、専門医の処方するインスリンの投与量から2単位程度の誤差で予測するAIを開発出来ています。 2023年8月から、東北大学病院、山口大学病院、仙台市立病院、大崎市民病院、みやぎ県南中核病院、東北労災病院などの大学/医療機関と共同で、薬事承認のための臨床性能試験を開始し、目標症例数である130症例の試験を修了しました。解析の結果、得られた正解率(平均)は85.46%であり、当初設定していた主要評価項目の目標正解率80%を5%上回る結果となる予想であり、専門医に対するAI予測の非劣性(同等)が証明されました。