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悪性黒色腫(メラノーマ)の第Ⅲ相試験の開始に関する記事掲載のお知らせ

免疫チェックポイント阻害剤が効かない悪性黒色腫に対して、内服することでその治療効果を高めるPAI-1(プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1)阻害薬RS5614の薬事承認に向けた第Ⅲ相治験が東北大学で始まりました。RS5614は、探索から最適化、非臨床GLP試験、GMP合成・製剤化、第Ⅰ相~第Ⅲ相試験(医師主導治験)まで一貫して東北大学などアカデミアとの共同研究で開発された日本発の医薬品となります。本件について、2月19日に東北大学の本部、医学部、大学病院にてプレスリリースが開示され、2月18日に日経バイオテク、20日に河北新報、21日に科学新聞社に記事が掲載されました。

 悪性黒色腫患者の罹患率は国内では10万人に1.5~2人と少なく、国内の総患者数は約5000人の希少疾患ですが、米国では10万人あたり21人、有病者数は約141万人と多い皮膚がんです。

 抗PD-1抗体ニボルマブなどの免疫チェックポイント阻害薬の登場で、悪性黒色腫の治療は大きく改善し、さらに抗CTLA-4抗体イピリムマブが開発され、抗PD-1抗体単独での奏効率を高める併用療法も実施されています。しかし、重篤な免疫系への副作用のため単剤投与に比べて投与中止の発現頻度は4倍と高く、さらに高額医療費にも繋がるため、副作用が無く、奏効率を上昇させる安全な内服薬の開発が待ち望まれています。

 PAI-1阻害薬RS5614は第Ⅱ相医師主導治験では、27人の患者に対して、治療後8週後時点での奏効率は25.9%(7例、完全奏効1、部分奏効6)で、安定を含めた病勢制御率は66.7%でした(PPS評価)。また、主要評価項目である8週併用時点の奏効率25.9%は、既に承認されている治療であるニボルマブ+イピリムマブ併用のヒストリカルコントロールの国内での奏効率13.5%を超える優れた成績でした。特筆すべきは、その併用期間が2ヶ月と短期間であるにも関わらず、二次治療としてのニボルマブ+イピリムマブ併用療法の奏効率を大幅に上回る結果であったことです。さらに、ニボルマブ+RS5614併用は、ニボルマブ無効例において生じた重篤な有害事象7例7件で、治験薬との因果関係の可能性があるのが肝機能障害2件と少なく、ニボルマブ+イピリムマブ併用より安全性が高いことが示されました。

本第Ⅲ相試験は、根治切除不能悪性黒色(メラノーマ)患者124例を対象に、ニボルマブとのRS5614の併用の有効性及び安全性を検証する第Ⅲ相ランダム化プラセボ対照二重盲検医師主導治験であり、東北大学病院など国内18施設(東北大学病院、札幌医科大学附属病院、弘前大学医学部附属病院、自治医科大学附属さいたま医療センター、国立がん研究センター東病院、国立がん研究センター中央病院、がん研究会有明病院、新潟県立がんセンター新潟病院、静岡県立静岡がんセンター、名古屋市立大学病院、筑波大学附属病院、岐阜大学医学部附属病院、島根大学医学部附属病院、愛媛大学医学部附属病院、九州大学病院、九州がんセンター、熊本大学病院、鹿児島医療センター)で実施されます。

科学新聞記事紙面リンク

科学新聞
https://sci-news.co.jp/topics/9912/

東北大学
https://web.tohoku.ac.jp/research/

東北大学医学部
https://www.hosp.tohoku.ac.jp/release/news/43570.html

東北大学病院
https://www.hosp.tohoku.ac.jp/release/news/43570.html

河北新報
https://kahoku.news/articles/20250219khn000070.html

日経バイオテク
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/release/25/02/18/23308/