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2024 World Conference on Lung Cancer(WCLC)におけるPAI-1 阻害薬 RS5614の非小細胞性肺がんの作用機序の発表について

当社 PAI-1 阻害薬 RS5614の非小細胞性肺がんの新たな作用機序に関して、2024年9月7日~10日に米国サンディエゴで開催される2024 World Conference on Lung Cancer(WCLC:世界肺がん学会)において、広島大学病院益田医師らにより発表されましたのでお知らせいたします。

非小細胞肺がんの予後は、オシメルチニブ*1などの分子標的薬*2やニボルマブ*3などの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)*4により改善しましたが、分子標的薬やICI治療後に腫瘍内で生存するがん細胞が耐性を獲得するため、多くの患者では治癒に至りません。益田医師らは、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)が上皮成長因子受容体(EGFR)変異*5を有する非小細胞性肺がんにおけるオシメルチニブに対する耐性獲得に関与していることを論文で発表されました(Cancers 2023; 15: 1092)。今回、さらにICI治療時のがん細胞耐性に関して検討し、非小細胞性肺がんのマウス皮下腫瘍モデルにおいて、ICIとPAI-1阻害剤RS5614の併用により、耐性がん細胞における免疫チェックポイント分子発現、腫瘍浸潤マクロファージ数、血管新生が減少し、腫瘍浸潤リンパ球数が増加し、がん細胞の耐性の減弱と増殖阻害を確認しました。これら一連の知見は、PAI-1が非小細胞性肺がんにおける分子標的薬やICIに対する耐性獲得に関与していること、さらにRS5614により改善することを示し、分子標的薬やICIとRS5614の併用療法が非小細胞性肺がんに対する新しい治療となる可能性を示唆します。

ドライバー遺伝子*5に変異が無い進行性非小細胞肺がんに対する1次治療には、プラチナ製剤併用化学療法とニボルマブ等のICIが用いられていますが、治癒に至る症例は少なく、2次治療としてドセタキセル等の化学療法が実施されています。しかし、無増悪生存期間は3か月と極めて短く、3次治療が必要となります。3次治療では、ニボルマブの再投与も選択肢ですが、ニボルマブ治療歴のある患者での効果は限定的です。ニボルマブの作用を増強するために抗腫瘍免疫を増強する治療薬の開発が行われていますが、免疫関連の重篤な副作用を伴います。実際に、近年の非小細胞肺がんにおける化学療法とニボルマブ・イピリムマブ併用の臨床試験では死亡例が多発したため試験が中止となりました。そこで、副作用が少なく、ニボルマブの奏効率を上昇させる併用薬が待ち望まれています。

当社は2023年9月から複数の抗がん剤治療歴を有する切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者(3次治療患者)39例を対象に、免疫チェックポイント阻害薬のニボルマブとRS5614との併用投与の有効性及び安全性を検討するための第Ⅱ相医師主導治験を、広島大学病院、岡山大学病院、島根大学医学部付属病院、鳥取大学医学部付属病院、四国がんセンター、広島市立広島市民病院の6医療機関で実施しております。

世界肺がん学会における本発表は、RS5614の非小細胞性肺がんに対する薬理作用の新たな作用機序を明らかにするものであり、ICIとRS5614の併用療法の科学的根拠を支持する知見です。