当社は、広島大学などの医療機関・研究機関と共同で、非小細胞肺がん治療薬としてPAI-1阻害薬RS5614の第II相医師主導治験を実施しています。この度、この医師主導治験を中心となって推進されている医師の1人である広島大学病院呼吸器内科講師・益田武先生のRS5614の医師主導治験に関するインタビュー記事が科学新聞(2024年1月19日号)に掲載されましたのでお知らせいたします。
(インタビュー記事掲載の背景)
当社では、悪性黒色腫治療薬開発に係る、PAI-1阻害薬RS5614とニボルマブ*1との併用による有効性及び安全性を確認する第II相試験を実施し、免疫チェックポイント阻害薬*2としてのRS5614のProof-of-Concept(POC)*3を取得しました。具体的には、ニボルマブが無効な悪性黒色腫患者に対してRS5614を併用することにより、ニボルマブとイピリムマブ*4の併用(奏効率13.5%)を上まわる奏効率24.1%が得られました。また、ニボルマブとRS5614の併用においては、治験薬との因果関係の可能性ある有害事象は、肝機能障害2件(5.9%)が発生しましたが、いずれも軽快・回復しニボルマブとイピリムマブの併用よりも安全性が高いことも明らかになりました(2023年8月16日に開示済み)。この免疫チェックポイント阻害作用に基づき、複数の抗がん剤治療歴を有する切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん患者(3次治療患者)39例を対象にニボルマブとRS5614との併用投与の有効性及び安全性を検討するための第II相医師主導治験を、広島大学病院、岡山大学病院、島根大学医学部付属病院、鳥取大学医学部付属病院、四国がんセンター、広島市立広島市民病院の6医療機関との共同で実施しています(2023年9月26日に開示済み)。益田先生は、この第II相医師主導治験を中心となって推進されている医師の1人であり、科学新聞には益田先生の本医師主導治験に対する想いが記載されています。なお、科学新聞の記事は以下のリンクをご覧ください。
*1ニボルマブ
プログラム細胞死1(PD-1)という免疫チェックポイント分子を標的とする抗体医薬(ヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体)で、免疫系の抑制解除による抗がん作用を狙った医薬品です。代表的な免疫チェックポイント阻害薬です。
*2免疫チェックポイント阻害薬
免疫系が過剰に活性化して自己を攻撃させないように抑制する分子を免疫チェックポイント分子といいます。しかし、がん細胞は免疫系からの攻撃を回避するために、この免疫チェックポイント分子を悪用します。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫チェックポイント分子の作用を阻害してがんに対する免疫系を活性化する医薬品です。現在治療薬として用いられている薬剤はすべて免疫チェックポイント分子に直接結合しそれを阻害する抗体医薬です。
*3Proof-of-Concept (POC)
想定した新薬候補物質の有効性を非臨床試験や臨床試験で確認することをいい、想定通りの結果が得られた場合は、POCを取得したといいます。
*4イピリムマブ
細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)という免疫チェックポイント分子を標的とする抗体医薬(ヒト型抗ヒトCTLA-4モノクローナル抗体)で、ニボルマブとは異なる標的の免疫チェックポイント阻害薬です。