全身性強皮症は、皮膚と多くの臓器が固くなる変化である線維化と血管障害を特徴とする全身性の自己免疫疾患で、「難病医療法」に基づいて国が指定した難病(指定難病51)です。その病因は不明で、病態に基づいた根治的治療は存在しません。全身性強皮症に伴う線維化は、皮膚の硬化や間質性肺疾患などの臨床症状を引き起こします。国内では、3万人以上の患者がいると推測されており、その死因の7割は本疾患によるもので、この内の3割以上は間質性肺疾患によるものです。また、間質性肺疾患は、直接の死因とならない場合にも、一部の患者では、高度の呼吸機能低下によって日常生活が著しく制限されることがわかっています。
全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に対する治療は、従来、ステロイドと免疫抑制剤の併用が第一選択とされてきましたが、その効果は極めて限定的です。近年、線維化を抑える薬剤であるニンテダニブが保険適用となりました。しかし、その効果は間質性肺疾患の進行を抑制する作用に留まっており、線維化した組織を正常に戻す効果は認められていませんので、なおも治療方法が確立されていないことが本疾患の課題と考えられます。
全身性強皮症は炎症、血管障害、線維化を主要3病態とします。RS5614はこれら病態を改善し、特に肺傷害(線維化、炎症)の改善と肺組織の保護作用を持っていることから、全身性強皮症に伴う間質性肺疾患を改善する可能性が示唆されます。
東北大学との共同研究で、皮膚と肺の線維化を発症することで世界的に認められている全身性強皮症モデルマウスを用いた非臨床薬理試験でRS5614の効果を評価しました。その結果、RS5614は投与量に応じて肺の線維化を抑制し、その効果は比較したニンテダニブより高いことが明らかになりました。このように、RS5614が全身性強皮症に伴う間質性肺疾患に有効であること、またその効果は既存薬のニンテダニブよりも優れていることが示唆されました。
全身性強皮症に伴う間質性肺疾患を対象として、RS5614の有効性と安全性を確認するための探索的第II相試験(医師主導治験)を、東北大学病院など国内の医療機関と共同で開始しました。