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PAI-1阻害薬(RS5614)の免疫チェックポイント作用について(広島大学との共同研究の説明)

2022年10月31日(月)、「広島大学との共同研究契約締結のお知らせ」を開示させて頂きました。

本ニュースでは、広島大学との共同研究契約内容に関連する「PAI-1阻害薬(RS5614)の免疫チェックポイント作用」について、一問一答形式で補足説明をいたします。

質問回答
がんの免疫療法とはどのような治療法ですか現在、がんの治療には、①手術療法、➁放射線療法、➂化学療法(抗がん剤)、④免疫療法があり4大治療法と呼ばれています。このうち免疫療法は体に備わっている免疫本来の力を利用してがんを攻撃する治療法です。 様々な免疫療法が提案されましたが、効果が証明された免疫療法の中でも免疫のブレーキを阻害する免疫チェックポイント阻害薬が主なものです。
免疫チェックポイント阻害薬とは何ですか過剰な免疫反応は有害ですので、体内にはそれを抑える機構が備わっています。そのようなブレーキ機能を担う分子は免疫チェックポイント分子と呼ばれています。実は、がんはこの免疫チェックポイント分子を悪用することで自分自身に対する免疫が働かないようにしています。免疫チェックポイント阻害薬は、免疫チェックポイント分子を阻害することで、このブレーキを解除し、がんに対する免疫応答を賦活化します。
免疫チェックポイント阻害薬は抗がん剤と何が違うのですか抗がん剤は細胞毒性を持つお薬で、がん細胞を直接殺傷します。これに対して免疫チェックポイント阻害薬は生体内の免疫チェックポイント分子を阻害して、もともと体が持つ免疫を活性化してがんを攻撃します。
RS5614はどのようなお薬ですかプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)という体にある蛋白質を特異的に阻害する化合物です。私たちはPAI-1が、免疫チェックポイント分子を介してがん免疫を阻害することを新たに発見しました。一方、PAI-1阻害薬は、免疫チェックポイント分子を阻害して、がん免疫を活性化します。 動物モデルでの試験で、RS5614を投与した動物で悪性黒色腫や大腸がんなどのがんが退縮すること、さらに免疫チェックポイント阻害抗体と併用することで相乗的に強くがん免疫が増強されることが分かりました。
RS5614の投与はどのように行われるのですか錠剤を1日1回内服します。
RS5614には副作用があるのですかこれまで多数の臨床試験で200人以上の被験者の方々にRS5614を服用していただきましたが、問題となる副作用は認められていません。また、1年間の長期投与でも安全性が確認されました。
RS5614は他の免疫チェックポイント阻害薬とどこが違うのですかこれまでの免疫チェックポイント阻害薬はすべて抗体医薬ですので入院して注射で投与されるお薬です。また、既存の抗体医薬は様々な副作用があることも分かっています。さらに、その薬剤費も高額です。 RS5614は、ご自宅で服用していただける飲み薬になると考えます。また、抗体と違って化学合成で製造されますのでその価格は抗体よりもかなり低くなると考えられます。
悪性黒色腫(メラノーマ)とは何ですか悪性黒色腫は皮膚がんの一種で、メラノーマとも呼ばれます。皮膚の色と関係するメラニン色素を産生する、メラノサイトという皮膚の細胞が悪性化してできる腫瘍です。 免疫チェックポイント阻害抗体が奏功する場合もありますが、まだその治療効果は十分でありません。私たちは、免疫チェックポイント阻害抗体とRS5614を併用することでがん免疫が相乗的に増強されることをモデル動物で発見しました。現在、悪性黒色腫患者を対象に免疫チェックポイント阻害抗体であるニボルマブとRS5614を併用する第Ⅱ相試験を進めています。 悪性黒色腫は希少がんですので国内で臨床試験を実施することは難しいといわれましたが、皮膚がんに対する研究を推進するNPO法人に属する主要な大学病院の医師たちにご参加いただき可能になりました。
非小細胞肺がんとはどのような病気ですか非小細胞肺がんは、肺がん全体の8~9割を占め、「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」などに分類されます。 非小細胞肺がんに免疫チェックポイント阻害抗体が奏功する場合もありますが、まだその治療効果は十分でありません。私たちは、免疫チェックポイント阻害抗体とRS5614を併用することでがん免疫が相乗的に増強されることをモデル動物で発見しました。非小細胞肺がんを対象に免疫チェックポイント阻害抗体であるニボルマブとRS5614を併用する効果を検証する第Ⅱ相試験を準備しています。