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慢性骨髄性白血病治療薬の第Ⅲ相試験開始のお知らせ

2022年8月3日に「慢性骨髄性白血病治療薬の第Ⅲ相試験開始のお知らせ」を適時開示させていただきました。

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS09109/20e03198/e947/422e/b9da/e3b89a8e1372/140120220803511169.pdf

本ニュースでは「慢性骨髄性白血病(CML)」について補足説明いたします。

慢性骨髄性白血病(CML)は、造血幹細胞の染色体に異常が起こり、がん化した白血病細胞が無制限に増殖する病気です。治療はイマチニブなどの分子標的治療薬(チロシンキナーゼ阻害薬、TKI)です。TKI投与によりCML細胞は死滅しますが、CMLのがん幹細胞はTKIの作用を受けず、その結果がん幹細胞から新たなCMLがん細胞が増殖し、再発します。CMLを治癒するためには長期にわたる高額なTKI治療の継続が必要であり、医療経済的な負担に繋がっています。長期継続服用による副作用も問題となっており、心筋梗塞や脳梗塞により死亡する例や網膜動脈閉塞症により失明する例も報告されています。したがって、可能な限り早期にTKI服用を必要としない治癒(Treatment free remission、TFR)に導くことが重要です。

当社のRS5614は、CMLがん幹細胞を骨髄ニッチから遊離させ、結果的にTKIの治療効果を高めることで、CMLを根治させる薬剤となる可能性があります。前期第Ⅱ相試験で安全性と有効性が確認できたので、第Ⅲ相試験を開始し、最初の被験者への投与が実施され治験が開始されましたのでお知らせします。

第Ⅲ相試験は、CML 患者を対象に RS5614 とTKIの併用効果を検証する多施設共同プラセボ対照二重盲検(※1)試験で、TKI 治療期間が3年以上の慢性期 CML 患者 60 名を対象とし、TKI 単独投与群よりも治験薬 RS5614 の併用群が2年間以上の DMR 維持率(※2)を有意に上昇させることを検証します。 本試験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和4年度「革新的がん医 療実用化研究事業」に採択され、AMED の支援のもと実施しています(代表機関:国立大学 法人東北大学、当社は分担機関)。

日本におけるCML総患者数は約15,000人以上と推定され、年々増加傾向にあります。CML患者様に早く薬剤をお届けしたいと考えます。

(※1) 二重盲検:対象患者を無作為に、治験薬(今回はRS5614)を投与する群と対照薬(今回は 効果がないプラセボ)を投与する群に分け、医師も患者もどちらが投与されるかを知らない条件で、両群同時に薬を投与する臨床試験方法であり、医師が効果の期待される患者に 対して治験薬を投与するなどの故意が生じたり、効果があるはずといった先入観が評価 に反映される可能性や、患者が知った場合もその処置への反応や評価に影響が生じることを避けるための試験方法です。それぞれの群で出た結果を比較評価することで、治験薬 の効果があるかを判断します。

 (※2) DMR維持率:現在の慢性期CML治療では高額なTKIを生涯服用する必要がありますが、最も 深い治療効果であるDMRを達成し、一定期間維持した一部の患者では、TKIを中止しても再 発がないこと(無治療寛解維持)が近年明らかとなっています。これまでに既存TKIで公 表されている1年間(48週)の累積DMR達成率は8-12%(ヒストリカルコントロール)で すが、後期第Ⅱ相試験で当社RS5614とTKIを1年間併用した場合の累積DMR達成率は33%と 高い治療効果が得られ、当社RS5614の有用性が確認されました。