当社は、医療課題を解決するために、多様なモダリティ(医薬品、医療機器、人工知能(AI)を活用したプログラム医療機器)を、大学や医療機関の医師・研究者と共に医療現場で研究開発しています。
この度、当社が開発を行っている維持血液透析医療を支援する人工知能(AI)を搭載するプログラム医療機器に関する論文が、「日本腎・血液浄化AI学会誌」創刊号の総説に掲載されましたのでお知らせいたします。
【維持血液透析医療支援プログラム医療機器の概要】
慢性腎不全患者は、廃絶した腎臓の代わりに水と老廃物の除去を行うために週3回、生涯にわたって維持血液透析を受けます。患者数は33万人を超え、医療費は1兆円を超えます。除水不足は心不全、高血圧等心肺機能に障害を与える一方、過度な除水は透析中の低血圧を生じ、気分不良、意識消失といった有害事象をもたらします。通常、透析病院では数十名の患者を対象に、1名の医師、数名の看護師や臨床工学技士を中心に管理が行われていますが、人的資源は充分ではなく、透析中に発生する有害事象の発生は、少ない人的資源を消費し、患者の生命予後にも悪影響を及ぼすために、重要な医療課題となっています。
当社は、安全安心な血液透析を実現するために、適切な目標総除水量や透析中の血圧低下を予測する人工知能(AI)を搭載するプログラム医療機器を、東北大学などの大学病院、民間透析クリニック、日本電気株式会社(NEC)、NECソリューションイノベータ株式会社と共同で開発しています。透析専門医の経験知(約2,800名、725,619回の透析実施記録)を学習することにより、当日の目標総除水量をコップ1杯程度の誤差(200ml)で予測可能であり、透析中血圧低下(20 mmHg以下)の発生に関しても透析開始前にAUC 0.91の精度で予測するプログラム医療機器が開発できています。
透析治療は専門性が高く、非専門医等では経験豊富な透析専門医と同様な除水量設定を行うことは難しいです。しかし、透析専門医数は充分ではなく、地方や夜間では非専門医が従事することが多く、多くの透析施設では透析専門医の指示の下で非専門医や経験豊富な看護師、臨床工学技士が除水量設定の補助をしているのも現状です。本プログラム医療機器は、少ない人的資源で透析診療に携わる医療従事者の負担を軽減でき、安全安心な透析治療の実施を可能とします。
本プログラム医療機器は、2022年10月に知的財産権を出願し、2023年2月には東北大学を代表機関としてAMED「医療機器開発推進研究事業」に採択されました。2023年5月にはPMDAの開発前相談も終了し、今後承認申請のための検証試験である臨床性能試験を行う予定です。
関連リンク:https://www.renascience.co.jp/pipline/aisolution/dialysis/