当社は、東北大学などの医療機関・研究機関と共同で、悪性黒色腫治療薬としてPAI-1阻害薬RS5614を開発しております。この度、河北新報(2024年8月31日号)に、治験調整医師として第二相試験を実施された東北大学大学院医学系研究科皮膚科学分野藤村卓准教授のインタビュー記事が、掲載されましたのでお知らせいたします。
河北新報の記事は以下のサイトをご覧ください。
悪性黒色腫はメラニン色素を作る細胞が悪性化し、手や足などの皮膚に黒色の腫瘍ができる希少がんであり、進行すると死亡率が高く、日本国内の患者は約5,000人いるとされております。治療薬としてニボルマブ(オプチーボ)*1など免疫チェックポイント阻害剤*2が使われていますが、日本人患者で有効なのは約2割にとどまっております。
当社は東北大学病院など6医療機関と共同でニボルマブが無効な悪性黒色腫患者に対して、RS5614とニボルマブと併用する第二相試験を2021年9月から2023年3月まで実施しました。患者39人に対し2か月間投与したところ、半数以上の患者の症状が半年間悪化せず、投与終了後もニボルマブの効果が続きました。従来の薬(ニボルマブとイピリムマブの併用*3)では約6割の患者に重大な副作用が出ていましたが、当社のRS5614併用では7.7%と安全性は極めて高いことが分かりました。
第二相試験の良好な結果を受け、今年度第三相試験の実施を予定しております。また、2024年8月28日付で厚生労働省より希少疾患用医薬品の指定*4を受け、承認に向けて開発を進めております。
*1ニボルマブ
プログラム細胞死 1(PD-1)という免疫チェックポイント分子を標的とする抗体医薬 (ヒト型抗ヒト PD-1 モノクローナル抗体)で、免疫系の抑制解除による抗がん作用を狙った医薬品です。代表的な免疫チェックポイント阻害薬です。本邦における悪性黒色腫に対するニボルマブの奏効率は22.2%であり、新たな併用療法の開発が望まれています。
*2免疫チェックポイント阻害剤
免疫の恒常性を保つために、自己に対する免疫応答を阻害し過剰な免疫反応を抑制する分子群です。免疫チェックポイント分子はリンパ球の過剰な活性化を抑制して自己を攻撃させないために存在しますが、がん細胞は免疫系からの攻撃を回避するために免疫チェックポイント分子を悪用します。現在、PD-1、CTLA-4 などさまざまな免疫チェックポイント分子が同定されています。免疫チェックポイント分子阻害薬は、これら分子を阻害して、がん免疫を正常化する抗体医薬です。
*3ニボルマブ・イピリムマブ併用
未治療進行・再発非小細胞肺がんを対象とした第Ⅲ相多施設共同臨床試験において、免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ・イピリムマブ併用療法を行った患者で、治療との因果関係を否定できない死亡が予期していた範囲を超える約7.4%(148 人のうち 11 人)で認められ、2023 年3月30日に本試験は中止されました。
*4希少疾患用医薬品指定
難病といわれるような、患者の数が少なく治療法も確立されていない病気のための医薬品です。対象患者数が5万人未満、難病などの重篤な疾病が対象、医療上の必要性が高い、代替する適切な医薬品や治療方法がない、既存の医薬品と比較して著しく高い有効性または安全性が期待される、開発の可能性が高いこと、といった指定基準があります。希少疾患用医薬品に指定されると、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の優先的な審査(審査期間の短縮)、薬価算定における市場性加算、さらに承認後の再審査期間が延長されて本治療薬事業の独占期間が長くなります。また、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所を通じての助成金交付などの優遇措置が受けられます。