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全身性強皮症患者の間質性肺疾患に対する第Ⅱ相試験のお知らせ

2023年3月15日に「国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の難治性疾患実用化研究事業の採択のお知らせ」を開示させていただきました。本ニュースでは「全身性強皮症及び当社のRS5614を用いて実施する第Ⅱ相試験」について補足説明いたします。

全身性強皮症(Systemin sclerosis; SSc、指定難病51)は皮膚と多くの臓器の血管障害と線維化を特徴とする全身性の自己免疫疾患(*1)ですが、その病因は未だ不明です。皮膚の硬化や間質性肺疾患(Interstitial lung disease; ILD)、胃食道逆流症、心病変、手指潰瘍などの症状が生じる難病です。日本におけるSSc患者は、3万人以上と推定されます。ILDは、SSc患者の死因の3割超を占める重篤な障害です。ILDが直接の死因とならない場合にも、線維化によって肺の機能が損なわれるため、重度の咳や呼吸困難などが生じ、日常生活は著しく制限されます。現行の治療薬の効果は充分では無く、自己免疫疾患の治療が進んだ現在においては、関節リウマチや全身性エリテマトーデスでは疾患関連死は全死因の10%未満ですが、SScでは死因の70%を疾患関連死が占めており、有効な治療法の開発が強く望まれています。

当社が開発中のRS5614は、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター1(PAI-1)の活性を阻害し、炎症、線維化、血管障害を抑制します。SScの病態は自己免疫に伴う炎症、線維化、血管障害が主体ですから、RS5614がSScの症状の進行を抑制する可能性が示唆されます。実際に、SSc動物モデルでRS5614の肺の線維化を抑制する効果が実証されました(*2)。現行のSSc治療薬であるステロイドや免疫抑制薬に比べて副作用が少ないこともRS5614の特徴の1つです(*3)。

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和5年度「難治性疾患実用化研究事業」の助成を受け、令和5年度から令和7年度まで第Ⅱ相試験(医師主導治験)を実施します。免疫抑制薬で治療中のSSc-ILD 患者50 名が対象で、RS5614の安全性と有効性を検証するプラセボ対照二重盲検試験(*4)です。治験実施医療機関は、東北大学病院、東京大学医学部附属病院など国内の医療機関を予定しています。

(*1)自己免疫疾患:私たちの体には、体内に入り込んだ細菌やウイルスなどの病原体や体の中で出来上がったがん細胞を異物とみなして攻撃する免疫という仕組みがあります。免疫は体を守るうえで大切な仕組みですが、自己免疫疾患では本来であれば異物と認識されない自身の体の一部を異物として認識され、攻撃されてしまうことで発症します。

(*2) SSc動物モデルでの有効性:抗がん剤であるブレオマイシンを継続的に皮下へ投与することによって(皮下投与モデル)、皮膚および肺に炎症および線維化を生じる全身性強皮症のマウスモデルを用いて、RS5614 の有効性を検討しました。ブレオマイシン投与開始同日からマウスにRS5614の1、5 mg/kgあるいは対照薬のニンデタニブの10、50 mg/kgを連日経口投与し、28日目 に解析を行った結果、肺の線維化のバイオマーカーであるヒドロキシプロリン量をRS5614はニンデタニブより低下させました。ブレオマイシンを経気道で投与するモデルでも、RS5614は肺ヒドロキシプロリン量を有意に低下させました。

(*3)RS5614の安全性:RS5614は、これまでに150名以上の患者(慢性骨髄性白血病、新型コロナ肺傷害)に投与され、慢性骨髄性白血病では1日180mg、48週間の投与(33例)が実施されましたが、治験薬に起因する重篤な有害事象は報告されておらず、安全性は高いです。

(*4)二重盲検試験:対象患者を無作為に、治験薬(RS5614)を投与する群と対照薬(効果がないプラセボ)を投与する群に分け、医師も患者もどちらが投与されるかを知らない条件で、両群同時に薬を投与する臨床試験方法であり、医師の故意の介入や、患者の先入観を避けるための試験方法です。

(ご参考)

AMED採択事業について

事業名:令和5年度「難治性疾患実用化研究事業」 

研究課題名:全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)に対するPAI-1阻害薬TM5614の第Ⅱ相医師主導治験

研究開発代表機関:国立大学法人東北大学大学院医学系研究科(研究開発代表者:教授 浅野善英)

研究開発分担機構:東京大学大学院医学系研究科、大阪大学大学院医学系研究科、福井大学医学部、金沢大学医薬保険研究域医学系、和歌山県立医科大学、群馬大学大学院医学系研究科、株式会社レナサイエンス

Q&A

質問回答
治験はいつから始まりますか。治験実施施設における治験審査委員会、治験計画届などの準備を進め、来年度から治験を開始する予定です。
この薬剤の承認申請はいつですか。探索的第Ⅱ相試験は令和8年3月末までには終了しますが、その後、承認申請に必要な検証試験を実施する必要があります。
新しい機序のお薬で、既存薬に比べてと安全性に優れていると期待しますが、医療費は高いのですか。公定価格である薬価は、薬事承認を得たのちに厚生労働省によって決定されますので、現時点で価格は不明です。しかし、化学合成で製造される低分子医薬品ですので、抗体などのバイオ医薬品と比較すると医療費は低いと考えられます。また、入院する必要はなく、本剤はご自宅で服用していただけるお薬です。
全身性強皮症に伴う間質性肺疾患の治療薬として他にどのようなものがありますか。全身性強皮症に伴う間質性肺疾患において、特発性肺線維症治療薬「ニンテダニブ」の有効性、安全性が確認され2019年に薬事承認されました。この薬剤は、肺の線維化につながるシグナル伝達経路を含む重要な受容体を標的とするチロシンキナーゼ阻害剤です。ニンテダニブは1日2回内服で服用します。
他の全身性強皮症のお薬と同時に服用することができますか。当社PAI-1阻害薬は、既存薬と作用機序が異なり、また安全性も極めて高いので、同時に服用することで相加的あるいは相乗的な効果が得られる可能性があります。併用での安全性と有効性を、今回の探索的第Ⅱ相試験で明らかにしたいと考えます。